第三章 基本
一 絶対基本の主な要素
(一)軸をまっすぐ
- 中心からまっすぐ上下に線を通した感覚が軸です。軸は左右、前後いずれにも傾かず、まっすぐに立てた状態に保つことが必要です。
- 傾きがあると、身体のバランスを崩すことになり、バランスの崩れた身体は、不安定で弱いものです。無駄な力みや必要以上の筋力に頼った動きは、バランスを崩す原因になります。
- 自分自身はまっすぐにしているつもりでも、実際はまっすぐになっていないことがあるため、注意が必要です。稽古を共にする人に見てもらい、まっすぐな状態を体で覚えるようにします。
(二)正面
- 常に自分がどこを向いているかを意識し、向きたい方向と一致させることが大切です。一致している場合、その方向が自分の正面であり、最も力を発揮し易い、最も強い方向です。一致していない場合、正面がない状態で、発揮される力も散漫で、弱くなります。言い換えると、中心、あるいは軸がどこを向いているか、意識している方向(例えば突こうとしている方向)と一致しているかと言うことでもあります。
- 自分の意識と、中心や軸の向いている方向にズレがあると、捻じれや歪みとなり発揮される働きは非効率で、弱いものとなります。
二 礼(お辞儀)
- 空天会では、礼を「お辞儀」として行っています。礼には「お辞儀」に儀式の要素があると考えているからです。雑念なく、真摯に、自分自身にお辞儀をする。しっかりと落とし、柔らかく、頭を下げ、上げる。正しいお辞儀をやりきると、争いは起きないと考えています。
- お辞儀は相手のために行うのではなく、自分自身に対して行います。自分自身に対してお辞儀をやりきることで調和が生まれると考えています。
- 組手では八字立から閉足立または平行立になり、相手とお互いに礼をします。落ちている人同士が礼をすると、礼の動作が一体となります。組手には礼が一体となる状態が必要です。
- 「稽古は礼に始まり、礼に終わる」と言われています。礼にはそれだけの重みがあると考えています。今後も探求を続けます。
三 正座
- 先生の話を聞くとき、稽古を見させていただくときは正座をします。
- 膝は拳ひとつ分空けて、軸をまっすぐにして座ります。
- 道場全体を広く見渡すような気持ちで座ります。
- 正座をすることで気持ちが落ちつき、より深く見聞きできるようになります。
四 立ち方
- 力みなく、まっすぐに立ったとき、体の重さは感じません。また心が自然と安らぎます。
- 自分では「まっすぐ立っている」と思っても、端から見ると違っていることがあります。胸を張ったり、腹が前に出たり、前傾していたり、片方の肩が上がっていたり、人それぞれです。
- 力みなく、まっすぐに立ったときの感じを覚えて、普段から意識することによって、正しい立ち方は徐々に身についてゆきます。正座も良いと思います。
- 八字立、騎馬立、四股立、前屈立等があります。
(一) 八字立
- 足は漢字の「八」の形に合わせ、仙骨を入れて軸をまっすぐに保った状態で立ちます。
- 前かがみになったり、反り返ったりせず、足裏の土踏まずを意識して、まっすぐに立ちます。
- 顔はまっすぐ前を向きます。鼻先は正面に向け、顎は適度に引き、目線は左右が水平になるようにします。
(二) 前屈立
- 騎馬立から左右いずれかに体を向けます。体重は両足に等しく配分します。
- 前足に体重をかける立ち方はしません。すぐに振り返れるようにするためです。
- 腰の高さは騎馬立で定めた高さのまま、変えません。
五 握り
- 握りは、追い突きのとき、組手で相手の手を握るとき、木剣を握るときなど、様々な動きで用います。
- 隙間がなくなるように握ります。指と指の間や手のひらなどに注意が必要です。隙間のない握りを「間を締めた握り」と言います。
- 間を締めた握りには、固く握る形と柔らかく握る形があります。
六 突き
- 念いの移動の表現のひとつで、間を締めて握った拳を前に出す動きです。
- 前に出す手(突き手)と留める手(引き手)は体の軸を介して一体です。
- 突き、払い、受けは表現する姿が異なるだけと考えています。体の軸を意識して、正面を取った上で落とし、しっかりと自分を表現しきることに集中します。
七 払い
- 念いの移動の表現のひとつで、相手の突きを払う動きです。
- 前に出す手(突き手)と留める手(引き手)と体の軸の関係は突きと同じです。
- 自分の肩幅分を守る意識で動きます。
- 受け身になるのではなく、しっかりと自分を表現しきることに集中します。
八 受け
- 念いの移動の表現のひとつで、相手の突きを受ける動きです。
- 要領は、払いと同じです。
九 蹴り
- 足を使って相手に自身の実在を伝えるので、「突き」など、手を使う動きと形が大きく異なりますが、体の内側や心のありようについては同じと考えています。前蹴り、横蹴り等詳細については今後の稽古で解明していく予定です。
江上茂先生の書 『気』